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A子さんを救ったお年寄りの熱意

老人ホームのMさんが、息をはずませながら電話してきた。数日前のこと。


障害者施設に引っ越したA子さんのところへ、Jさんの車で様子を見に行ったという。

「まあ、にこにこ、にこにこ、ほんとにうれしそうにしてねえ。部屋を見せてもらったら、一人部屋でいい部屋!Jさんがコタツをあげたいと言ったら、社会福祉協議会の人が取りに来て運んでくれた。A子ちゃんもよろこんであったよ。伊藤さん、ありがとう」

「いいえ。MさんとJさんの熱意のおかげですよ…」

MさんとJさんは、80歳ちかい。

たまたま倉庫暮らしのA子さんと知り合い、彼女から「助けて」と頼まれ、私のところに連れてきた。(ブログ「寒波の中,A子さん、障害者施設に引っ越す」参照)

「あんな生活を3年も…。戦争を体験したあたしたちでも、がまんできない。なんとかしてあげて」と言って。

A子さんと面会した後、4,5日して、また携帯に電話がなった。

「今日も寒かったから、様子をJさんと見に行ったとです。火の気のないところで、かわいそかですよ。A子ちゃんは犬の散歩の仕事をして、一日500円もらいよるでしょう。犬の飼い主の人が言ってましたよ。寒い日に、犬と抱き合って寝ていたこともあったって。急いでなんとかならんですか」

「社協と市役所と話して、施設の入所のため、障害者認定を急いでしてもらうよう、頼んでいるんですが。・・・わかりました。すぐにどこか保護してもらうよう、市のえらい人に頼みにいきましょう」

「市長ですか?」

「いえ。福祉の一番えらい人です」


翌日、A子さんとMさん、Jさんと4人で、民生部長に面会に行った。(部長室で)

「早く施設に入りたい。今のところは、早く出たい」とA子さん。

「部長さん。一度、見てみらんですか?どんなところに住んでいるか。かわいそうでたまらんですよ」と、Mさん。

「今まで健康だったからよかったけど、もし、あんなところで倒れたりしていたら、大変なことになっていたでしょう。いま施設入所を頼んでいますが、待機者がいるのですぐに入所できないようです。施設に入所できるまで、どこか住むところはないでしょうか。寒さがきびしくて、夜、公園のトイレに行ったりするのは、ほんとにつらいと思いますよ」と私。

部長は、「施設入所まで住むところが必要、いうことですね」といって、

担当職員とも話をしながら、さっそく庁内の各部署にてきぱきと電話をし、市営住宅や県営住宅の空き状況や、老人施設の状況を調べ始めた。


一般職員では、縦割り行政の中で限界があって、どうしても対応が遅くなってしまうことがあるが、市の幹部となるとさすがに市役所全体が動いている感じ。

私たちの前で、いろんな職員が出たり入ったり、30分ほど忙しい時間が過ぎた。


しかし、公営住宅はどこも空いていなかった。

老人施設は若すぎて入れない。

色々あったが、最終的には、隣町のグループホームがひとつ空いているということで、私とA子さんと職員とMさん、Jさんが出かけて行って、なんとか入所にこぎつけた。

とにかく、このままほっとけないというMさんとJさんの熱意が、A子さんを救ったのは間違いない。

二人は、今ではA子さんの実の親のようだ。


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2008年02月12日