2012年2月23日、午前10時過ぎだった。私は一般質問の発言通告書を提出するため、議会事務局に行った。
隣の議員控室の机には、3月議会に提出される議案の入った分厚い茶封筒がすでにおかれていた。封を開けると、多くの議案書とともに、「財産の無償貸付」の議案第25号が入っていた。林間施設(木の香ランドと樋の口ハイランド)を、福岡市の株式会社○○スピリットにタダで貸すという契約議案である。
いったい、どんな会社なのか?
3月3日の議会質疑で市の説明がおかしいと思った私は、3月6日、法務局に会社の登記簿を取りに行った。そこで、会社設立が2月22日であったことを知った。私が議案を受け取った日の前日に、その会社は設立されていたのである。
つまり市がこの議案を作成したとき、会社はまだ存在していなかった。市の説明は、すべてウソだった。
しかし市長派議員は、積極的に賛成討論をおこなって、議案に賛成した。私に「伊藤さん、あんた、もっと人を信用せな。性善説よ」と説教する議員もいた。前原市のときから、議会の役割は市をチェックするのではなく、不正を黙認して市の政策をともに推進することにあった。「市と議会は、車の両輪」というのが、彼らの好きな言葉だった。
3月23日、議会最終日、議案は賛成多数で可決し、松本前市長は、3月26日、無償貸付の契約を結んだ。
30万平方メートルの土地と14棟の建物が含まれるキャンプ場や森林公園を、10年間タダで貸すという契約を、議員の紹介で3か月前、初めて会ったばかりの福岡市の人と結んだのである。
議会の議決とは、本当にすごい力だ。
数億円の財産を、10年もタダで貸すという不当な契約を、合法的に実現してしまうのだから。多数決で決定される議会では、議員の過半数(時には3分の2)を味方につけたら、どんなことも可能となる。
しかも、後で気がついたのだが、この議案には「無償貸付の決定書」がなかった。前市長は、作成根拠のない議案を、部下にねつ造させたのである。まるで詐欺集団のボスのようだ。
松本前市長は、自分の財産ではない市の財産を、虚偽の公文書をつぎつぎ作成し、福岡市の人にタダで貸した。彼は、それと同じ手口で、市の財産の無償譲渡も行っていたのである。なんと恐ろしいことだろう。
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