実在しない法人を事業者選定
(1)選定すべきは「事業者」~「糸島市立保育所移管先選定委員会設置規定」
左は2015年(平成27年)11月15日付広報いとしま。「神在保育所民間移管先法人を募集」と書いてあり、応募できる法人は、「糸島市、旧糸島郡地域に住所を有する法人」とあります。2017年6月議会で、月形祐二市長と谷口俊弘副市長が「法令違反はない」と答弁したのは、保身のための真っ赤なうそでした。
上は、「糸島市立保育所移管先選定委員会設置規定」です。規定の第一条には、「公正かつ円滑な保育所の運営及び児童福祉の向上に最も適した運営主体(以下「事業者」という。)を選定するため、糸島市立保育所移管先選定委員会(以下「委員会」という。)を設置する。」と書かれています。
市が選定しなければならなかったのは、翌年の4月1日から市立神在保育所の園児120人の保育を任せることができる、保育実績のあるきちんとした事業者だったのです。
しかし市は、この規定にそった事務を行わず、子ども課職員に、個人や設立準備会、架空法人の応募申請書を受理させました。「実在しない法人」を「ある」と偽り事業者選定したのは、フォレストアドベンチャーのときとまったく同じです。
(2)法人の設立日は無償譲渡の契約前日
これは2016年(平成28年)2月26日に、若尾勉氏が糸島市に提出した「移管先法人」の申込書です。
(申請者)住所 福岡市東区三苫三丁目9番3号
法人名 いとしま子どもの会(仮称)設立準備会
理事長(代表者)若尾勉
下は申込書に添付された「法人概要」です。
・法人名 「社会福祉法人いとしま子どもの会(仮称)設立準備会」
設立準備会を「法人」扱いしています。
・住所 「糸島市神在678番地1」
ひどいですね。この住所は、市立神在保育所の住所です。あろうことか若尾氏は、移管先法人の申請時点で、自分の法人欄に市立神在保育所の住所を書いていたのです。応募前から「ここは自分のものになる」と分かっていたんですね。
・設立年月日「平成29年3月31日」
これが一番ふざけている、と思いました。この日は、市長が、神在保育所の全財産を移管先法人に無償譲渡する契約の前日だからです。何千万円もの財産を市からタダでもらう日の前日を、法人の設立日にしていたのです。市の選定事務が、事業者決定書も議案も法人でなくていい、という前提で行われていたことがわかりました。
こんなデタラメな法人概要を子ども課が受理し(2月26日)、市長が選任した委員会にかけ(6月)、市長が移管先法人に決定し(7月)、さらに市長が社会福祉法人に認可し(11月)、さらに市長が無償譲渡の議案を議会に提案し(翌3月)、議決後、さらに市長が4月1日に無償譲渡の契約を結んだのです。
若尾氏が設立準備会で応募してから、市長と無償譲渡の契約を結ぶまで、わずか1年と1か月。保育所の建物と設備、何千点もの備品すべて、およそ6~7千万円もの財産の所有権が移転しました。
(3) 実在しない法人の「法人概要」
10年間で3回開かれた移管先選定委員会で審査された「実在しない法人」をみてみましょう。設立日がないのですぐわかります。
⑴ 代表者 本田陽子
⑵ 代表者 石橋長俊
⑶ 代表者 笠和壽
⑷ 代表者 吉田桂子
⑸ 代表者 植田康弘
⑹ 代表者 石橋徹登
⑺ 代表者 池田浩行
林間施設(木の香ランドキャンプ場、森林公園樋の口ハイランド)の無償貸付同様、5つの保育所財産の無償譲渡でも、市は、実在しない法人を「ある」と見なして事業者選定していました。
(4)市の幹部が架空法人の代表者
行政によるヤラセは、公平であるべき事業者選定を歪め、ばく大な税金をムダにします。何も知らないで書類に名を連ねた市民や、事務を命じられた職員を犯罪に巻き込む恐れさえあります。
上の法人概要を見ていたら、驚くことに気がつきました。⑹です。
「社会福祉法人碧晟会」は、実在しない架空法人ですが、その代表者の仲西氏は、応募当時市の幹部でした。市を退職したのは平成26年3月末なので、この時はまだ市の職員。役職は、市民の安全を守る糸島市消防署の消防次長でした。
つまり、2015年(平成27)4月1日、月形市長は、春田整秀元前原市長の経営する法人に、市立深江保育所を、また議員のお友達法人に市立長糸保育所を無償譲渡しましたが、このときの事業者選定には、市の消防次長が架空法人の代表になって移管先法人募集に申し込み、法人選定に加わっていたのです。(つづく)
議会多数派が守るので市は反省しないで同じことを繰り返す
2018年9月議会から
ちよ便り10号・2017年10月号 表裏
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