市長松本嶺男の隠蔽工作
上)フォレストアドベンチャーの入場料金。大人3600円、子ども2600円。森林公園樋の口ハイランドにて2019年5月撮影。
(1)森林公園の貸付期限は2023年3月31日
今年3月12日付の西日本新聞によると、日本政策金融公庫の新型コロナウイルス関連融資を違法仲介したとして、貸金業法違反(無登録営業)の罪に問われた元公明党衆議院議員〇〇氏について、検察側は懲役2年、罰金100万円を求刑しました。(11日、東京地裁)
そこでもう一度、2012年の林間施設の違法貸付の話にもどしましょう。
2012年(平成24年)3月、松本嶺男市長は、〇〇議員(当時)から糸島市の公明市議を通じて紹介された人に、林間施設(木の香ランドキャンプ場と森林公園樋の口ハイランド)を、10年間無償貸付しました。
県警が職員の官製談合事件で市役所を捜査している最中に、市長は副市長らにヤラセの事業者選定を開かせ、自ら虚偽の決定書に押印し、虚偽の議案を議会に提案する背任の罪を犯していたのです。(法令順守①~④を参照)。
しかしその3か月後、思いがけないことが起こり、松本市長は市役所ぐるみの隠蔽工作の末、今度は、議会の議決を経ず、森林公園樋の口ハイランドだけを、年間10万円で約11年間、民間会社に貸し付けるという違法な貸付契約を結びました。
いま森林公園でフォレストアドベンチャーの営業をしているのは、はじめに無償貸付した会社ではなく、東京の(有)パシフィックネットワークという会社です。その貸付の終了期限が、いよいよ来年の3月31日に迫っています。
(2)2012年6月 市長に思いがけないピンチが…
2012年6月はじめ、森林公園樋の口ハイランドに、民間会社が発注したフォレストアドベンチャー(大型アスレチック)が完成しました。
松本市長は、フォレストアドベンチャーオープンのためにアクセス道路を7千万円で整備してやり、「広報いとしま」で宣伝し、マスコミにも宣伝し、いよいよ7月21日のオープンを待つばかりになりました。
しかし、ここで最大のピンチが市長に訪れます。アスレチックの建設費4千万円が、施工業者に支払われていないことがわかったのです。会社は資金集めの最中で、全額を完済できる状況にありませんでした。東京の施工業者は、全額即入金しなければ裁判に訴えると言っています。さあ一大事です。
市幹部と一部議員は、市長室で頭を抱えて相談したようです。もし裁判沙汰になったら、なぜ市の公園に民間のアスレチックがあるのか? 本来なら市民の利用に供するため、市が適正に管理すべきキャンプ場と森林公園を、なぜ営利企業にタダで貸したのか? これまでの違法行為が全部バレてしまいます。
市長の頭は、怒りでいっぱいだったでしょう。国会議員がバックについてると思ってさんざん便宜を図ってやったのに、カネを持っていなかったのか。背任罪で逮捕されたらどうするんだよ、と。
当時、松本市長は大きなミッションをいくつも抱えていました。自分の選挙対策本部長だった元議員や現職議員らが所有する土地の開発、市立保育所やきららの湯の無償譲渡等々。市長に大勢の利害関係者の運命がかかっていました。そこで市長は、部下を使って隠蔽工作に乗り出します。
(3)2012年7月7日 農林水産部長を東京に派遣
7月7日、松本市長は、裁判を回避させるため、農林水産部長を東京に派遣し、(有)パシフィックネットワークの社長と交渉させました。いまタダで森林公園を貸している会社との契約を解除するかわりに、糸島でフォレストアドベンチャーの経営をしてくれないかと頼んだのです。
木の香ランドキャンプ場は市の施設に戻すことができても、アスレチックが完成した森林公園を市の施設に戻すことは不可能です。その上、「7月21日フォレストアドベンチャーオープン」とマスコミで大宣伝していたので、市長は引くに引けない状況にありました。オープンまであと2週間。
パシフィックネットワークは各地でフォレストアドベンチャーの経営をしていたので、市の申し出に合意しました。
「決して損はさせん。20ヘクタールの立派な公園で、トイレも駐車場もみんなそろっとる。初期投資が何もいらずに事業を始められるぞ。俺は市長だから、市の広報やホームページで宣伝してやる。マスコミにも宣伝してやる。市の委託事業のフリをして営業してくれればそれでよか」というのが市長の本心ではなかったかと思います。実際、その通りになりました。
7月19日付の糸島新聞です。大きく「フォレストアドベンチャー 運営会社変わる」と書いてあります。市が契約するより先に新聞報道が行われました。
「パシフィックネットワークに有償貸与」とありますが、いくらで貸したと思いますか? 土地、建物あわせて年間10万2140円です。
記事には「運営会社の変更について松本嶺男市長は「市のチェックが不十分だった」と語った。」とありますが、うそです。もともとチェックなどしておらず、事業者選定はヤラセだったのだから。
(4)2012年7月20日 契約相手方の住所がない年間賃料約10万円の「決定書」
7月20日、松本市長が決裁した「決定書」です。
・「旧糸島市森林公園(樋の口ハイランド)を有限会社パシフィックネットワークに管理運営していただくため」とありますが、これはうそです。事実は「管理運営」ではなく「貸付」。
・この公文書には、契約相手方の有限会社パシフィックネットワークの住所が書いてありません。
・予約契約の期間は平成24年7月20日~平成35年3月31日。10年間も!
・年間賃料は土地5万8350円、建物4万3790円。合計10万2140円です。
地方自治法第96条は、「適正な対価なくして市の財産を譲渡あるいは貸し付けるときは、議会の議決が必要」と定めています。よってこの契約は、議会での議決が必要でした。しかし、議決は行われていません。
これに松本嶺男市長以下、谷口俊弘副市長、農林水産部長、農林土木課長、総務部長以下多くの職員の印鑑があります。「決裁したのは市長の俺だが、みんなでハンコを押したんだから、お前たちにも責任がある。告発なんかするなよ」と言わんばかりです。
市長に「おかしい」と言う部下は一人もいなかったのです。
「不正を前に沈黙するものは共犯者」という言葉があります。刑事訴訟法239条第2項には、公務員は犯罪があると思料するときは告発しなければならないと書いてあるのに。
(5)2012年7月20日 議決をせず契約相手方の住所が違う契約書を結ぶ
7月20日、松本市長がパシフィックネットワークの金丸社長と結んだ「事業用定期借地権設定及び定期建物賃貸借予約契約書」の最後の署名欄です。
翌日がフォレストアドベンチャーの開店だったので、「契約終了!」「隠蔽成功!」「セーフ!」と胸を撫で下ろしたでしょう。
契約相手方は、「東京都新宿区新宿1丁目3番地2号、有限会社パシフィックネットワーク 代表取締役 金丸一郎」とあります。しかし登記簿で調べると、3番地2号ではなく3番地12号でした。
内容虚偽で必要な議決を経ていないこの契約書は、不正隠蔽のために作成された地方自治法違反の偽造公文書です。
(6)2012年8月16日 課長を公証役場に派遣,公正証書作成
8月16日、松本市長は農林土木課長(後の建設都市部長)を代理人として福岡公証役場に派遣し、森林公園の土地・建物を10年と8カ月、年額10万2140円で貸し付ける公正証書をパシフィックネットワークの社長と作成させました。
県が2億7千万円で建設し、旧二丈町が宝物ように大切にしてきた美しい森林公園樋の口ハイランドが、議会の議決なく11年近くも民間業者に貸し付けられました。(公正証書は次回公表)
(7)2014年4月1日 月形市長「賃貸借料改定契約書」結ぶ
2年後の2014年(平成26年)2月2日に行われた市長選挙で、松本前市長や春田元市長、大勢の議員の応援を受けて初当選したのは、前自民党県議の月形祐二氏でした。
同年4月1日、月形市長は(有)パシフィックネットワークの社長と、「事業用定期借地権設定及び定期建物賃貸借契約に基づく賃貸借料改定契約書」を締結しました。それがこの公文書です。
消費税が5%から8%に増税されたため、森林公園樋の口ハイランドの建物の賃料を、年間4万3790円から4万5040円に改める内容です。
会社の住所は、東京都新宿区新宿1丁目3番3号。それが「11番13号」に書き換えてあります。
来年3月31日、パシフィックネットワークとの賃貸借契約がいよいよ終了します。月形市長は契約を更新せず、森林公園を無料の施設に戻し、シャクナゲ庭園など1万6千本の桜やモミジ等の樹木を、市民は再び楽しめるようになるでしょうか?
小川のそばで愛犬と寝転んだり、展望台で眺めを楽しんだり、3キロの小道を森林浴しながら散策できるでしょうか?子どもたちが小山に登って草スキーを楽しむ「きゃあきゃあ」と笑う声を再び聴くことができるでしょうか?あと1年後です。(つづく)
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