9月の決算員会の質疑でわかったことだが、市が昨年度、商工振興費として約3000ある地場業者へ出した産業振興費は「がんばる中小企業者応援補助金」で、総額391万8000円だった。恩恵を受けたのは、全部でわずか25業者。
1業者あたり15万円にしかならない。そのいっぽう、市の産業団地に移転してきた「G食品」に対しては、この1社に「雇用奨励金」として720万円を補助金として出した。約1400業者を組織している商工会でさえ、補助金の額は1485万4000円だった。
市は、「G食品に36人が雇用された」と誇らしげにいうが、中身を聞くと、34人がパートで正職員はわずか2人という。そんな会社は市内にいくらでもある。
苦労して苦労して税金を収めている地場業者には、すずめのなみだのような補助金。よそからくる業者には、税金で多額の補助金。
なぜ?地場産業の振興よりも、産業団地の建設や企業誘致に力を入れているからだ。何億円、何十億円もかけて産業団地をつくり、そこへ来る業者に多額の補助金をだすより、いま、糸島市で頑張っている地場業者の振興のために、もっともっと、いっしょに知恵をしぼり、お金も出すべきだ。
すでに企業誘致はどこも破綻している。
産業団地が売れずに塩漬けになっていたり、大企業に何十億円という補助金を出して誘致したが、景気が悪くなるとすぐに撤退して、町がさびれてしまった、と言う状況だ。そんなまちづくりは、もう、はやらない。
その町で生まれ、そのまちを愛し、その町で小さいながらも事業活動を続ける地場業者こそ、これからのまちづくりの主役になるべき人たちだ。
糸島には、個性的なまちづくりの条件がある。
素材だけでなく、魅力的な職種や腕のいい職人もたくさん。豊かな農産物を活用して食品加工をやっているという若い事業者に会った。
Uターンしてきて、農業をはじめた青年にも会った。二人とも目が輝いていたが、援助がなく非常に苦労していた。
こういう若者たちに、集い、情報交換し、交流できる場をまず提供するところから始めたらどうだろう?
企業誘致で飛び回る何人もの職員を減らし、地場業者の悩みや空き店舗対策や市街地の活性化に、真剣に取り組む人材を増やしてほしいと心から思う。