私が訴えられた裁判の争点~環境美化はボランティア
2021年9月議会で、私は多面的機能支払交付金について質問し、年に約250万円の交付金を受給している泊一環境保全組合の環境美化活動は本交付金の対象事業にはならないこと、日当の領収書には偽造があることなどを取り上げ、市に調査と是正を求めました。
すると22年7月25日、泊一環境保全組合と泊一行政区自治会及び泊一環境保全組合の前会長と前事務長は「多面的機能支払交付金に関して不正はない。伊藤議員の議会質問と議会ニュース、ブログで名誉を棄損された」として550万円を支払えと私を福岡地裁に提訴しました。
当該組合の会長は市長が任命した行政区長(地方公務員法に規定された非常勤特別職員)で泊一行政区自治会長も兼ね、前事務長は元市の幹部職員でした。つまり、国の検査を受けた当時、両名とも公務員で法令を遵守しなければならない立場にあった人達だったのです。
裁判の争点は以下の2点です。
1,泊一行政区で行われている環境美化活動は農用地の水路の泥上げ、ため池・農道の草刈等である。⇒本当か嘘か?
2,交付金の領収書に偽造はない。⇒本当か嘘か?
先月9月8日の口頭弁論で原告側は、これまで通り「環境美化の活動内容は水路の草刈り・泥上げ・農道の清掃、溜池の草刈り作業。したがって多面的機能支払交付金の対象事業である」と主張し、市が「活動は適切。問題ない」と議会で答弁しているとアピールしました。
被告の私は、今年5月14日に行われた泊一行政区における環境美化活動の写真を撮影し、裁判所に提出しました。その一部が前回ご紹介した以下の写真です。
環境美化活動
市道の清掃
市道の清掃
市道の清掃
県道の清掃
写真でわかるように、泊一行政区の環境美化活動は市内の他の地域同様、住宅地の美化を目的としたボランティア活動であって、農業振興の交付金の対象事業ではありません。
それは2020年2月13日の国の検査でも指摘されており、九州農政局多面的機能支払推進室の國廣博昭室長と山口高士係長による検査結果表には、次のように書いてあります。
「環境美化活動を年2回実施しているが、実施範囲を確認した結果、事業計画で位置付けられていない範囲を含む活動であり、本交付金の活動とは認められない」
したがって、泊一環境保全組合は環境美化の名目で受け取った交付金を国、県、市に返還すべきだったのです。
しかし13年もの間、活動組織の虚偽報告と不正受給を見逃してきた市は、自らの責任が露見するのを恐れ、「環境美化の活動内容は、水路の草刈り・泥上げ、農道の清掃、溜池の草刈り等を行なっている」と国、県の役人に虚偽の説明をしました(国の検査結果表より)。
活動組織を直接指導する権限は、地元の市町村にあります。市が「活動は適切。問題ない」と強く主張したことから、結局、国と県はそれに従って組合に交付金の返還を求めませんでした。国の検査官による正しい指摘を、市が真っ赤な嘘でねじ曲げたのです。
農家の出方で行われている泥上げ・草刈り
では実際に泊一行政区における農用地の泥上げ・草刈り作業は誰が行なっているのでしょうか?
それは何十年もの間、泊一農区に加入する農家の方々が行なっています。その写真も裁判所に提出したのでごらんください。環境美化から2週間後の今年6月4日、「農区の出方」の名称で行われた泥上げ、草刈り作業の様子です。住宅地の清掃とは全然違いますね。
農地維持活動
朝8時に集合し農家の皆さんが農用地に散らばる。
早朝の泥上げ作業。骨の折れる大変な作業です。
きれいに泥上げされた農業用水路。こうして大切な農地を維持する活動を共同で行います。
草刈り作業
この活動は、泊一行政区に住む農業者と他の地域の入り作農業者およそ50人が協力し、農用地保全のために農業者だけで行なっています。これが交付金対象の農地維持活動です。
この出方の日当について、さらに重大なことがわかりました。農業者が出方の日当をもらったのは2020年からで、それまでは1円も日当をもらっていなかったのです。
20年6月7日、出方作業の後ひとり8千円が現金で初めて支払われ、参加者は驚いたそうです。農業者は出方に参加すると日当が出るということすら知らなかったのです。
組合は2007年度から19年度まで総会を開かず、出方の参加者に日当が出るとの説明を怠り、1円の日当も支払っていませんでした。13年間、払わなかった日当のお金はどこにあるのでしょうか?
17年で4016万円という多額の交付金を受給しながら、長年にわたる未払い金があると指摘しているのに、市は「領収書にサインと印鑑があった。だから支払われている」(23年9月議会)「領収書は信用するしかない」(21年9月議会)などと答弁しています。
行政の役割を放棄し、特定の利害関係者の便宜を図っていると言えるでしょう。
原告らが「名誉棄損」と主張する私の一般質問
それは2021年9月14日に行なった一般質問です。「糸島市議会」から検索して、ぜひ会議録にアクセスしてみてください。
議長の質問妨害、傍聴席からヤジが飛ぶ中で至極真っ当な質問をしたと思っています。
市政を正すための質問が「名誉棄損」に認定され賠償金を払わされたら、議会制民主主義はいっそう形骸化し、糸島市はますます公務員倫理も法令遵守もない状態になってしまうでしょう。
この質問のあと大勢の議員が「交付金の問題は市の事務ではない」だの、「伊藤議員にこれ以上交付金の質問をさせるべきではない」だの、「泊一環境保全組合に不正はない」だのと大合唱しました。
調べると彼らの多くが本交付金の利害関係者でした。中には、日当を支払わず別通帳に貯め込み飲食に使っていると思われる活動組織や、議員が組織の顧問を務めている活動組織もありました。
毎年毎年、市が1億5千万円も予算化している多面的機能支払交付金。それはすべて国民の税金です。だからこそ法令を遵守し制度にのっとって運営すべきなのです。
この裁判は11月17日に証人尋問が行われることになりました。その様子はブログでお伝えします。
ちよ便り26号
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