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告発者が訴えられた裁判~「咎めだてしない」約束

告発者が訴えられた裁判

「咎めだてしない」約束


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訴状の一部


2019年12月、数人の住民が多面的機能支払交付金の使途に不審感を抱き、国(九州農政局)に告発しました。

この勇気ある告発があったからこそ、20年2月、国は活動組織(泊一環境保全組合)の検査を実施し、10項目にもわたる不適切な状況を確認できました。

もし内部告発がなかったら、いまだに総会は開かれず、農業者への出方日当は1円も支払われていなかったでしょう。

しかし先の検査で国と県は、農業者への日当未払いや不正受給等まで把握できませんでした。市が虚偽説明をして検査を妨害したからです。

22年7月、当時の組合の責任者が告発した住民を訴えて、223万円余りを請求する裁判を起こしました。理由は「謝罪して職を辞したら咎めだてしない」と約束したのに、伊藤議員に情報を提供して、21年9月議会で質問させたからというものです。


議員の口利きと弁護士の忖度

「謝罪して職を辞したら咎めだてしない」とはどういう意味でしょうか?

なぜ善良な告発者が訴えられ、お金を請求されたのでしょうか?

それは、水面下で議員の口利きと告発者の代理人であった弁護士の忖度があったからです。

相談

2020年12月20日、私はAさんBさんと面会し、国に泊一環境保全組合の不正を告発したら、保全組合の会長であるC区長=自治会長から「行政にチクったのはお前か」「交付金を返還しないといかんようになった。500万円返せ」などの暴言やパワハラメールを受けたうえ、地域では「カネがほしくて行政にチクった」「頭がおかしい」などさまざまな陰口を言われ困っているとのことで、紛争解決のため弁護士を紹介してほしいと頼まれました。

ふたりが地域の環境問題で弁護士法人Dに相談したことがあると聞き、「そこの弁護士なら権力に忖度せず力になってくれるでしょう」とすすめ、「私は議会で交付金問題の是正のために力を尽くします」と約束しました。


弁護士への依頼

2021年1月18日、AさんからD弁護士法人と契約し費用を支払ったと連絡がありました。

そのころ、私はBさんの名前で作成された偽の受領書を複数入手しました。17年3月末で他地区へ転居したBさんが、転居した後も行政区自治会の会員名簿に載せられ、17年度、18年度の水路泥上げ作業に従事して日当を受け取ったという、まったく身に覚えのない受領書です。

21年2月3日、D法人の弁護士は、区長のパワハラと文書偽造等について事実関係を問いただす文書をC区長ら組合と自治会宛に送付しました。それを見せてもらうと、二人の立場に立った実に立派な文書だったので、ここの弁護士を紹介してよかったと安心しました。


議員の口利きと弁護士の忖度

ところが2月17日、D法人の弁護士は当事者のC区長らと行政区自治会公民館で接触(面談)していたのです。

AさんBさんの話によると、21年2月3日付の連絡文書を受け取ったC区長は対応に苦慮して地元のE議員に相談し、E議員はⅮ法人の弁護士に「C区長が泣きついてきた。C区長の話を聞いてほしい」と頼みました。C区長はE議員と非常に親しく、E議員はD法人の弁護士と親しかったのです。

思いもよらない展開でした。依頼人の利益を第一に考えるはずの弁護士が「糸島の議員に頼まれた。議員の名前は言えない。自分たちにも付き合いがある」と言って、相手方当事者との面談に出かけたというのだから。


「咎めだてしない」の文書

私が上記の話を聞いたのは21年4月15日のことです。4月14日付でC区長に送付された「ご連絡文書」を見せてもらうと、「職を辞すれば咎めだてしない」という一文がありました。それが下の文です。

「…環境美化活動に係る書面には自身の署名・押印でないものが含まれていること、実際は参加していない環境美化活動について氏名が冒用されている事実を把握しております。既に、不正の事実は隠し切れない状況に至っているのではないでしょうか。

しかしながら、貴殿より、A氏、B氏に対し……強く非難されてきたことを謝罪された上、一連の不正行為の責任をとって役職を辞されるのであれば、当方としてもそれ以上、咎めだてをするようなことは致しません


私は驚いてAさんBさんに「職を辞するだけで彼らがしてきたことを許せますか? 会長も事務局長も市の職員ですよ」と聞きました。

すると「絶対に許せないし納得できなかったが、弁護士に説得されて同意してしまった」と言いました。ふたりは何かおかしいと思いながら、穏便な解決をすすめる弁護士に応じてしまったのです。


謝罪

画像

4月22日、C区長からD弁護士法人へファックスで宛名のない一枚の連絡文書が送付されました。(写真上)それにはこう書いてありました。

「前略 まず冒頭に、2月3日、3月24日、4月14日とお手紙を受け取り、なんの対応もしなかったことについて、心よりお詫び申し上げます。

A氏に対して、不適切なメール及び暴言を浴びせたことについては、行政区長としてあるまじき行為であり、深く反省し5月の役員会に辞職の旨を伝えその日をもって職を辞するものです。それと同時に区長が兼任する、泊一環境保全組合の会長も辞することになります。

2021年4月22日 泊一行政区長 〇〇〇〇」


領収書の偽造など不正行為については一言も触れていません。C区長は不正を認めその責任をとることなく、それどころかAさんBさんの実名をあげて辞職せざるをえなくなった旨の文書を町内に配布しました。そのため「AとBがC区長を辞めさせた」とふたりはいっそうつらい立場にたたされました。


告発者を訴えた裁判の判決

2022年7月、C前区長がAさんBさんを訴え220万円を請求した裁判は、不正があったかどうかではなく、「不正行為の責任をとって職を辞すれば咎めだてしない」との約束したのに、伊藤議員に交付金問題を議会で追及させたのは約束と違うという裁判でした。

21年9月議会で私が当該組合について質問したのは、文書偽造を含め、重大な不正があるのに、市がそれを放置していたからでした。

AさんBさんは、すでにD弁護士法人とは契約を打ち切っていたので、この裁判を新しい弁護士のもとで闘いました。

しかし裁判所は「職を辞すれば咎めだてしない」の言葉にとらわれて、地裁では一人2万7500円を支払う判決が下りました。控訴しましたが、先日の10月20日、高裁での判決は棄却でした。

地元議員や代理人の弁護士にハメられたような「咎めだてしない」という言葉。痛恨の一文です。


役職を辞すればすむ問題ではない

私と告発者は卑劣な攻撃にさらされてきました。でもそれは、不正の真実が明るみになるのを恐れる人たちがいるからです。

この間の議会質問で、

1,住宅地の環境美化活動を農業の交付金の対象事業と偽っていた。

2,領収書・受領書を偽造していた。

3,農業者に出方の日当を13年間支払っていなかった。

4,総会を開かず、県に提出した総会議事録、決算書は偽造だった。

これらすべてを市は「問題ない、適切」と擁護し、議会も容認しています。糸島市役所には虚偽公文書が溢れているので、地域や組織を浄化する能力に欠けているのです。

しかしながら、区長ひとりが役職を辞すればすむ問題ではありません。4016万円の交付金の全額返還が求められるような極めて悪質なケースです。


写真 「咎めだてを致しません」のご連絡文書

C9F94114-70DE-4B0C-B305-E875F3D45808 下線は伊藤が引く。

最後に「誠実な対応がなければ、書類の偽造等について九州農政局に情報提供し、交付金の不正受給について警察に告発する…」と書いてある。