学校でのいじめ、体罰、自殺、柔道界での指導者によるわいせつ、パワハラ等々、さまざまな人権にかかわる悲劇的な問題が表面化している。関係者の苦悩は、はかり知れない。
それは、市役所も同じだ。私が、現市長をまったく信用できないと確信したのは、総務部長のわいせつ事件のときだった。
2007年5月11日、午後9時過ぎ、市長は市内のスナックに幹部職員5人を引き連れて入店した。
7人の行政区長の方々もいっしょだった。
企画課長は真っ赤なドレスを着て踊り、随分盛り上がっていたらしい。
そんな中で、市長の側近中の側近、総務部長が、飲んでいい機嫌だったのだろう、カウンターにいた顔見知りの女性に気づいて近づき、「三段腹」とからかって、おなかを触ったのである。
翌朝、女性から苦情の電話を受けた市は、部長、課長に一升瓶をもって女性の会社に謝罪に行かせた。
女性側は、一升瓶ではなく、公務員らしくきちんとした対応を求めた。すると市は、とたんに事実を否定し始めた。「わいせつ行為」をなかったことにしようとしたのである。
「なぜ、女性の側から苦情が来ているのに、1か月たっても対応しないのか」と議会で尋ねると、市長は「私もそこにいたから一部始終を見ていた。客観的に見てそんな事実はなかった」と答弁した。
そして西日本新聞の記者に総務部長は、「ちょっとからかっただけ。冗談と受け止めてもらったと思っている」と弁解した。
自分が、市役所の最高幹部であり、人権担当部長であり、「女性を守る」男女共同参画社会担当の最高責任者であるという自覚は、微塵もない。「女性の敵」としか言いようがない発言だ。加害者側の言い分だけを聞いて、被害者側の言い分を聞かない対応で、市は「そんな事実はなかった」と隠ぺいした。
このとき何人かの議員は、「こんなことを取りあげるから、職員が飲みに行きにくくなったじゃないか。
飲み屋の売り上げが減って、地場産業に打撃を与えた」と私を非難した。
倫理観のない常識はずれの市長と、人権感覚の乏しい議会の馴れ合いが、公務員倫理や議員の品性をないがしろにし、今もパワハラ体質は消えず、市政が捻じ曲げられている。市役所・議会内の深刻なパワハラの実態を、もっともっと市民にしらせ、なくす努力をすべきだった。
そうしていれば、合併後、議員・上司のパワハラで、職員が自殺に追い込まれる悲劇を防げたかもしれない。今もそれが悔やまれる。
※地方公務員法第29条は、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった職員には戒告、減給、停職、免職の懲戒処分を科することができると書いてある。
ちなみに、当時の部長クラスの給料は、年間800万円程度であったと記憶している。
処分をまぬかれたこの部長は、退職後、市の補助金団体に天下りした。選挙の時は、自分の危機を救ってくれた市長のために、さまざまに活躍しているのは言うまでもない。