住民監査請求その2〜 意見陳述
契約相手方の住所が違う貸付契約書
議会の議決なく結んだ貸付契約書。(有)パシフィックネットワークの住所は、茅ヶ崎市菱沼海岸2番32
登記簿では会社の住所は、茅ヶ崎市東海岸南五丁目3番62ー1号
本日、谷昌治監査委員と川上伸悟監査委員、傍聴の方々の前で意見陳述しましたので、内容をご紹介します。
監査委員への意見陳述 2023年7月20日
私は、糸島市に在住する伊藤千代子と申します。
令和5年3月28日、月形裕二市長は、樋の口ハイランドの土地194,532㎡、建物3棟を、有限会社パシフィックネットワークに、令和5年4月1日から10年間、年額111,670円で貸し付ける「事業用定期借地権設定及び定期建物賃貸借予約契約」を締結しました。
そして同年4月28日、農林水産部水産林務課長を代理人として福岡公証役場に派遣し、借地借家法にもとづき上記契約の公正証書を作成しました。
これについて、私は、先月7月3日、当該契約行為の取消しを請求する住民監査請求をおこないました。監査委員におかれましては、請求を受理し、本日、意見陳述の機会を与えていただきまして、感謝申し上げます。
(1)
ではまず「樋の口ハイランド」がどのような施設かを簡潔に述べます。
樋の口ハイランドは、平成5年、福岡県が2億7,400万円で二丈一貴山字樋ノ口12番390に建設し、二丈町に移管した森林公園です。
20万㎡の広々とした公園には、豊かな森林と、展望所、芝生広場、シャクナゲ庭園、桜並木、パラグライダー基地、駐車場が完備され、四季折々に遠足やハイキング、花見など無料で憩える公園として愛されていました。
これは、当時、公園の前に掲げられていた看板の写真です。樋の口生活環境保全林案内図(二丈森林公園樋の口ハイランド)と書かれ、トイレや駐車場、子どもの遊び場、池、小川、3キロの遊歩道、花々が植えられた庭園などの整備された様子がイラストマップに描かれています。
こちらの分厚い本は、筒井秀来二丈町長のときに編纂され、平成17年11月に発行された「二丈町誌(平成版)」です。このなかの第11節景勝地には、樋の口ハイランドが自然の名所として紹介されています。
「自然を生かして整備された名所 樋の口ハイランド」は、「平成5年、森林公園として建設費2億7,400万円をかけて、開設された。標高400メートルからの玄界灘の眺めはすばらしいものがあり、芝スキーや新緑、紅葉など四季を通じて楽しめる」と書かれています。
ちなみに、二丈の真名子木の香ランドキャンプ場は、平成2年に同じく森林公園として、二丈福井に建設費3839万円で開設されました。
(2)
平成22年に前原市、二丈町、志摩町の1市2町が合併し、糸島市が誕生しました。以降、樋の口ハイランドは糸島市所有になり、産業振興施設に位置付けられ、農林土木課が管理する施設になりました。
「広報いとしま」で樋の口ハイランドが市民に行楽地、観光地として紹介されていますので、ご覧ください。
平成24年3月議会で、樋の口ハイランドと真名子木の香ランドを、行政財産から普通財産に変更する議案が可決し、松本嶺男前市長はこの二つの公園を株式会社ネイチャースピリットという会社に無償貸付しました。
ネイチャースピリットは、平成24年6月、樋の口ハイランドの中に、アスレチックを完成させ、翌7月からフォレストアドベンチャーの事業を始める予定でした。
しかし、会社はアスレチックの建設代金4千万円を建設業者に支払えなかったため、市は、ネイチャースピリットとの契約を解除し、同年7月20日、アスレチックを建設した有限会社パシフィックネットワークと年間約10万円で樋の口ハイランドを10年間、貸し付ける契約を結びました。
今回、糸島市が本年3月28日に、樋の口ハイランドをパシフィックネットワークと「事業用定期借地権設定及び定期建物賃貸借予約契約」を締結したのは、2回目ということになります。
(3)
ではつぎに、当該契約行為が、客観的にいちじるしく正当性を欠き、法令、条例に違反している点を述べます。
契約相手方の(有)パシフィックネットワークは、神奈川県茅ヶ崎市に本社のある民間企業で、全国各地でフォレストアドベンチャーの事業を展開し、樋の口ハイランドでは大人、小人ともに4,000円の利用料金をとって営業しています。
地方自治法第237条第2項は、地方公共団体の財産を適正な対価なく譲渡し、又は貸し付けることを原則禁止しています。
したがって、行政が多額の事業費を投じて整備した土地を、年額111,670円(月額約9,306円)という、適正な対価とは言えない料金で10年間も民間に貸し付ける契約を結ぶためには、地方自治法第96条第1項第6号の規定により、議会の議決が必要です。しかし、当該貸付契約は、議会の議決が行われていません。
前市長のときも、議会の議決なく貸付契約が結ばれており、2回続けて地方自治法に違反する契約が結ばれたことになります。
(4)
つぎに契約書の最後のページをご覧ください。
契約年月日、令和5年3月28日
甲 福岡県糸島市前原西1丁目1番1号 糸島市 糸島市長 月形裕二
乙 神奈川県茅ヶ崎市菱沼海岸2番32 有限会社パシフィックネットワーク
代表取締役 金丸一郎
と二人の代表者の名前が書いてあります。
しかし、私が一昨日、7月18日に入手したパシフィックネットワーク社の登記簿によると、会社の現住所は、茅ヶ崎市菱沼海岸2番32ではなく、茅ヶ崎市東海岸南5丁目3番62-1です。
契約書に書かれた住所は、契約日の6日前、3月22日に本店を移転した以前の住所です。よってこの契約書は法令上瑕疵があり、無効です。
ちなみに10年前、前市長が契約したときも、パシフィックネットワークの住所は、登記簿と違っていました。なぜ毎回、契約書に本当の住所を書かないのか?その点を、監査委員におかれましては調査願います。
(5)
つぎに貸付物件をご覧ください。市が貸し付ける物件目録に、工作物「フォレストアドベンチャー」と称するフィールドアスレチック施設一式と書かれていますが、アスレチックは市の所有物ではなく、パシフィックネットワークが樋の口ハイランドの中に建設した会社の所有物です。貸付物件に内容虚偽があります。
(6)
最後に、地方自治法第1条の2は、地方公共団体は、住民福祉の向上を図ることを基本とすると謳っています。
しかるに、市民、県民のために建設された行政財産である樋の口ハイランドを、市の産業振興施設にも位置付けられていた施設を、一民間企業に貸し付けてしまった結果、この10年間、森林公園は住民の利用ができず、住民福祉向上の妨げになっています。
したがって、この監査請求で求める措置の内容は、月形裕二市長が行った当該契約行為の取消しです。
よろしく監査のほど、お願い申し上げます。
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