「きさま黙れ!」…あれから25年
①地震、原発、暮らし…100回の一般質問をした議場
写真は昨年12月18日本会議終了後の議場。新庁舎が完成し、1998年から25年間在籍したこの議場ともお別れだ。
初めての一般質問は障がい者福祉の充実についてだった。それから地震、原発、教育、福祉、不正の追及…と、ここで100回の一般質問をした。
法令を遵守しないパワハラ議会で政治が歪められ、税金が無駄遣いされている。市民のために使えば良いことがたくさんできるのに。
議会の構成員として必要な資質や知識を有しておらず、内容虚偽の議案さえ議決する腐敗した議会。反対意見は徹底的に封じ込め、すさまじい同調圧力で異論を許さない。そんな議会はもはや議会とは呼べない。
②「声のでかいもんが勝つ」
私は日本共産党の二議席目の議員として1998年11月の選挙で初当選した。初めて議員バッジを付け、出席した議員全員協議会でのこと。
議長が「議運にお諮りして、今後『議会便り』には発言した議員の名前は載せないことにした。発言した議員の宣伝になる」と言った。
私はすぐさま「議長!」と手を挙げ、「議会はガラス張りにすべきです。発言した議員の名前を載せないのには反対です」と言った。
すると議長は激昂して「きさま黙れ!」と怒鳴り「共産党がぁ」と言った。あまりに大きな怒鳴り声だったので、私は椅子ごと後ろにひっくり返りそうになった。
でもここは議会。きっと誰かが注意するだろう、この非常識な議長を諌めてくれるだろうと様子をうかがった。しかし誰もが下を向いて沈黙し、注意する人はいなかった。
市民文教委員会室に移動後、委員長が私に「ここは声のでかいもんが勝つんじゃ」と言った。「ヤクザじゃあるまいし冗談じゃない。それならできるだけ大きな声で発言しよう」と決めた。
2004年4月発行の日本共産党の「前原の風」から
「夢のあるトンネルを作りたい」春田整秀市長が長野峠にトンネルを掘る計画を打ち出し、それに私が反対したときのビラ。ヤジ暴言がひどく「こんな議会でいいのでしょうか?」という記事を何回も書いた。
③品性も倫理観もない
まだハラスメントが問題にならない時代。当時体重が60キロを超えていた私が廊下を歩いていると、後ろから「尻が石うすのごたるばい」と言って笑う声がした。人権や教育を語る資格のない議員が何人もいた。
公共事業の利害関係者として開発の先頭に立っていた議員、多額の借金を抱え調整区域の土地を売りたがっていた議員、業者のカバン持ちをしていた議員、議員報酬の他に市の補助金団体から月に十万円も役員手当をもらっていた議員、女性に暴行して逮捕された議員、酒の匂いをプンプンさせていた議員、覚醒剤で逮捕された議員…。
25年の間には実に色々な議員を見てきた。しかし「品性がない」「議会を混乱させた」として、懲罰を受けた議員は私だけだ。
市民の傍聴がない議員全員協議会は密室だったから、反対意見を言おうものなら一斉に怒鳴りちらされた。
「黙れ!市が問題ないと言いよろうが!」「反対ばかりすんな」「お前が悪いったい!」「関係なかろうが!」ワアワアワア!…それは会議というより糾弾(きゅうだん)だった。
「いいえ、黙りません!だっておかしいでしょう!」と私は絶対に引かなかった。ひとりで5人、10人相手に激論する修羅場を何十回も経験した。
④反対者には徹底的な嫌がらせ
あるとき職員が挨拶しないので「おかしいな」と思っていたら、「××議員が伊藤議員と親しくしたらお前らも共産党と見なすと言われた」と聞いた。ヤジ暴言が飛び交う前近代的な議会は、言論の府ではなく、多数派が支配する恫喝議員の天国だった。
旧庁舎3階にある議会の廊下。左奥が議場。右奥が議員の控室。
2002年10月、私は臨時議会に出席するため階段を上ったところで待ち伏せしていた10人あまりの集団に突然囲まれた。彼らは元前原町長三嶋兵蔵氏の取り巻きだった。
元町長は引退後も春田市長の後援者として市政に絶大な影響力を持っていた。当時、市は元町長の親族が経営するホテルを通る道路を9億円で建設し、このホテルに6億円の立ち退き料を支払うというメチャクチャな計画を実行しようとしていた。道路の必要性よりも、経営の苦しいホテル救済のための計画であるのは明らかだった。
それに私達日本共産党2人と自民系2人の4議員が反対し、市民の関心も高まっていた。
元町長の取り巻きたちは、議場前の廊下で私を取り囲むと、一斉に「ビラにウソを書くな!書き直せ!」と怒鳴った。私が吊し上げにあっている様子を、××議員がニタニタ笑いながら見ていた。
私は訂正を拒否し沈黙を貫いた。すると10分か15分ほどで「このアマ!」「しおらしい振りしやがって…」とか何とか捨て台詞を残して去っていった。
元前原町長はこの後「名誉毀損」で私を刑事告訴し、私は警察から呼び出しを受けた。しかしビラで反撃すると告訴を取り下げた。
この件では、共産党の男性議員と自民系議員一人が名誉毀損で訴えられ、ひどい目にあった。目的のためには手段を選ばない卑劣な手法は今も同じである。
この道路計画は市長選挙を闘うことでやめさせることができたが、敵は同じような攻撃を次々しかけてきた。詳細は別の機会に書く。
2002年 「前原の風」10月号から
⑤身内の不祥事、違法行為はもみ消す
地方自治上、行政の違法行為は議会が正すことになっている。明白な贈収賄事件でもない限り、警察が選挙で選ばれた市長を捜査するようなことはない。
2005年に自民・公明の支援で市長に当選した松本嶺男はそれをよく知っていて、強大な与党議員団をバックに職員や元職員、地域の有力者らを使って嘘とヤラセの事業者選定を繰り返した。議会での虚偽説明は日常茶飯事だった。
命令通り不正をやり遂げた部下は昇進させ、さらに大きな事業を任せ、天下りさせた。違法行為に関わった可愛い部下の不祥事は「何もなかった」ともみ消し、自らも仲のいい建設業者や議員らと飲み歩いた。政治倫理条例には罰則がないから痛くも痒くもないのである。
有力議員の土地を都市計画で優先的に開発してやり、不当な口利きにも応えてやり、何でも賛成の議会を強固にしていった。
それに九大移転による膨大な利権が絡んでまちを蝕んだ。ある議員は、自分が推進した公共事業で土地が売れカネが入って有頂天だったのだろう、視察先で風俗の女性をホテルに呼んだ。それがよほど楽しかったのか、翌朝ホテルの朝食のとき視察のメンバーらに話した(自慢した?)。
それを私が聞きつけ議長に抗議して調査を求めたが、議長はたじろぎながらも「そんな事実はなかった」とかばって隠蔽した。みんな仲良し。みんな友達。このときのビラ(ちよ便り)は別の機会に公開しよう。
⑥地震の義援金を私物化、流用
能登地震のニュースを見ていると胸が痛む。国は一刻も早く本気で支援に乗り出すべきだ。地震大国でありながら阪神淡路大震災、東日本大震災の教訓が生かされず、備えができていない。それに原発。
腐敗した政治は決して市民、国民を助けない。2005年3月20日に発生した西方沖地震で旧前原市は大きな被害を受け、全国各地から8300万円の義援金が寄せられた。ところが松本市長は、義援金を被災者には495万円しか配らず、市と市内の行政区自治会で山分けするというデタラメなことをした。
市の会計に次の災害のためと1000万円入れ、市内の自治会には「領収書はいらない」と言って総額6725万円を配った。それに議会はこぞって賛成した。(この件はRKBが私の取材にきてテレビニュースで批判的に報道してくれた)。
義援金を私物化し領収書のいらないカネを配ることで地域支配の道具に利用したのだと考えている。
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⑦懲罰の嵐
2010年の合併後、議会のインターネット中継が始まるとダイレクトな暴言は激減した。しかし多数決で徹底的にイジメる手法に出た。
与党議員らは私に「品性がない」「議会を混乱させた」などと適当な理由をでっち上げ、3回の懲罰と2回の辞職勧告を議決した。「真実かどうか」は問題ではないのである。
「広報いとしま」の議会欄に「伊藤千代子議員に辞職勧告」という記事がデカデカ掲載され、全戸配布された。私はストレスで具合が悪くなり胸の動悸に苦しんだ。
2011年「糸島の風」4月号から
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⑧離党
39年の間、私は平和と民主主義を掲げて闘う日本共産党の一員であることに誇りをもって生きてきた。党の躍進を願えばこそどんな攻撃にも耐えられた。
しかし2015年、訳あって私は共産党を離党し無所属になった。市長は2014年の選挙で月形祐二市長へ変わったが、松本市政をそのまま継承した。
私へのイジメ・懲罰はさらに激しくなり、2017年9月議会ではストレスで息が苦しくなり議会から病院へ救急車で運ばれた。
2022年1月の選挙で共産党議員2人が落選し、ひとり野党状態になってしまった。年間700億円にものぼる市の税金の使い道をチェックすることなど到底不可能。
市はオール与党議会でますますやりたい放題。潤のアンダーパスも住民の反対を押し切っていよいよ工事に入ろうとしている。
時代遅れの地縁・血縁・利権の選挙はもうやめよう。税金の使い道を任せられる人をしっかり選ぼう。法令を遵守しコンプライアンスを守る真っ当な市政にしないと、いつか取り返しがつかなくなる。
⑨市役所ぐるみの嘘とヤラセ
昨年12月23日の新庁舎落成記念式典に、松本嶺男前市長と谷口俊弘元副市長(現行政区長)が出席し、来賓席の一番前に座っていた。議会がまともなら役職を追われ社会的に非難されて当然の人たちである。
月形市長は前市長の市政を継続し、保育所の民営化に係る事業者選定で架空法人を使うというデタラメなことをした。
糸島市では応募資格のない申請書を受け付け、内容虚偽の決定書、議案を作成し、それを議会がロクに審査せず議決するという手法で、特定の利害関係者の私腹を肥やしてきた。
関係者が無数の違法行為をスルーすることで、長年に渡り市民や社会を欺いてきた。裁判所のような宣誓、罰則がないから、平気で虚偽説明、虚偽答弁をするのである。
野見山暁治画伯が市に寄贈してくださった「みんなウソ」という絵を多くの人に見ていただきたいと思う。
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⑩真実が大切にされる市政に
この議場では、権力にとって都合の悪い真実が無数に隠蔽されてきた。
文書偽造は犯罪であるが、糸島市には虚偽の行政文書があふれている。多面的機能支払交付金の領収書や指定管理者の決算報告書に事実と違う虚偽記載があっても、決して問題にならない。問題にしない。
地方自治法に基づいて議会が正しく機能しなければ、市役所ぐるみ、まちぐるみ犯罪の温床になってしまう。
私たちは選挙でしか政治を変えることができない。一人ひとりが主権者として税金の使い道、政治に関心を持つことが大切だ。自分達の生活とかけがえのない子どもたちの未来を守るために。
ちよ便り20号~2021年1月号
ちよ便り19号~2020年10月号
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